令和4年4月からの年金法改正

年金法の改正についてお話します。

年金を負担する人たちのイラスト(神輿型)

令和4年4月からの改正は3つ

●在職定時改定
●在職老齢年金28万円の壁から47万円の壁
●年金の繰上げ減額率0.5%から0.4%への変更

令和5年4月からの改正は1つ

●繰下げみなし制度

を順に解説します。

●在職定時改定について

65歳以降に厚生年金に加入して働き続けると保険料を納めることになるので年金は当然増えます。この納めた保険料はいつ年金に反映されるのか、いつ年金が増えるのかが法改正のポイントです。

改正前の制度では、「70歳になった時」か「退職をした時」のどちらかのタイミングでしか年金が増えません。

70歳になった時のタイミングでは65歳から70歳まで厚生年金で仕事をした場合、年金をもらいながら5年間厚生年金の保険料を納めることになりますが5年間の厚生年金保険料は70歳になった月の翌月から年金に反映されます。70歳まで働いていたら65歳から70歳まで年金額が変わらないということです。

退職をした時のタイミングでは、たとえば65歳から厚生年金に加入をして70歳前に退職をした場合、65歳から退職までの厚生年金保険料は退職した月の翌月の年金に反映されます。つまり退職しないと年金が増えません。

改正後の制度では、
令和4年以降、9月1日を基準にして翌年8月までの保険料を10月の厚生年金に反映させるということを毎年繰り返していきます。

厚生年金に加入して仕事をしていても毎年年金が増えることになります。たとえば、65歳以降に厚生年金加入で働いている場合、法改正後の基準日となる令和4年9月1日よりも前の65歳から令和4年8月までの保険料が在職中でも令和4年10月分の厚生年金に反映されて増えた年金がもらえるようになります。

70歳以降は働いていても厚生年金の保険料負担はないので年金は増えなくなります。70歳以降に仕事をしていた場合は、70歳直前の9月1日から70歳までの期間を70歳になった月の翌月から年金に反映されるようになります。年金は2か月分後払いなので、在職定時改定で令和4年10月と11月の年金がもらえるのは令和4年12月支払いからです。

つぎの改正は

●在職老齢年金28万円の壁から47万円の壁について

在職老齢年金とは厚生年金に加入して働きながらもらう年金のことです。在職老齢年金は給料と賞与と年金の合計が基準額を超えると年金が停止されます。

在職老齢年金の年金停止の計算方法は?というと、、、、、

改正前は28万円という基準額があります。28万円という基準額に対して月給(標準報酬月額)と直近1年間の賞与を12で割った月額と65歳前にもらえる特別支給の老齢厚生年金の月額の合計が基準額の28万円を超えると超えた額の半分の年金が停止されます。

たとえば
月給が20万円、賞与1ヶ月分が6万円、年金1ヶ月分が6万円だった場合、合計は32万円。

32万円から基準額28万円を引くと超える金額は4万円です。超えた金額の半分が停止されるので4万円×2分の1=2万円が1ヶ月停止される金額です。結果、年金月額6万円から停止額2万円を引いた残り4万円が1ヶ月当たりもらえる年金額ということになります。

改正後は基準額が47万円になります。

先ほどの事例で考えたように、月給と賞与と年金を合計しても47万を超えることはないので年金は全額支給されることになります。令和4年4月から給料は高くても年金が停止されにくくなるということです。年金は2か月分後払いなので、令和2年6月の支払いから改正後の年金になります。(4月分と5月分は6月支払い)

つぎの改正は

電卓を見せるセールスマンのイラスト(女性)

●年金の繰上げ減額率0.5%から0.4%への変更ついて

まず年金の繰上げについてお話します。本来、老齢年金がもらえる年齢は65歳です。65歳よりも前に減額される代わりに前倒しで年金をもらうことを繰り上げといいます。

たとえば、昭和36年4月2日生まれ以降の男性は65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金がもらえますが、繰上げ請求をすることで減額された年金が60歳から前倒しでもらえるようになります。

改正前は本来もらえる年齢から1か月前倒しすることで0.5%減額されます。65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金をもらえる人が60歳で繰り上げた場合、65歳からもらえる年金を60歳でもらうことになるので60ヶ月(5年)の前倒しになります。60ヶ月×0.5%で30%減額されます。65歳からもらえる年金が200万円なら200万円×30%=60万円、60万円が一生涯減額されることになって60歳からもらえる年金は140万円になります。

改正後
本来もらえる年齢から1ヶ月前倒しすることで0.4%減額に変更されます。0.4%減額の対象者は令和4年3月31日時点で、60歳に達していない方、昭和37年4月2日以降生まれの方が対象となります。この生年月日より前に生まれた方は0.5%減額で変わらないので注意してください。

先ほどと同じ例で考えてみると、65歳からの年金を60歳でもらうことで24%減額になります。65歳からの年金が200万円なら200万円×24%=48万円、48万円が一生涯減額されるので60歳からの年金は152万円になります。

損益分岐点を改正前後で比較してみると、たとえば、改正前で65歳から年額200万円もらえる場合、60歳で繰り上げて30%減の140万円で5年間の累積額は700万円、繰上げしないで65歳から200万円の年金をもらう場合の累積額の比較をします。繰上げをしなかった場合の方が65歳からの年金額が高いので何年も年金をもらっていくことによって繰上げをした場合よりも累積額が多くなるタイミングが来ます。そこが損益分岐点です。約77歳で累積額は逆転します。改正後は約81歳です。減額率が下がるので損益分岐点は4年遅くなります。

注意が必要なのは繰り上げをすると繰り上げの取り消しは絶対に出来ません。障害年金がもらえなくなる可能性があります。

つぎの改正は

●繰下げ上限年齢70歳から75歳へ変更について

まずは年金の繰下げについてお話します。65歳からの年金を66歳以降にもらうことで一生涯増額した年金をもらえます。これを繰下げといいます。

繰下げしない場合に65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金がもらえます。繰下げの場合は、たとえば65歳からもらえる年金を1年遅らせて66歳でもらうとした場合、65歳から66歳までは0円、66歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれ増額された年金額になります。

それでは繰下げして増える年金額を計算してみると、、、、、繰下げは65歳時点の年金額に増額率をかけて計算します。

改正前は1年待って66歳から年金をもらうと8.4パーセント増額者年金がもらえます。以降、1か月0.7%ずつ増額されます。そして、70歳まで繰下げができます。

改正後は70歳までしか繰下げ来なかったものが75歳まで繰下げできるようになります。

注意!
75歳繰下げができるのは令和4年3月31日時点で、70歳に達していない方(昭和27年4月2日以降生まれの方)または受給権を取得した日から5年経過していない方が対象となります。

つぎの改正は

●令和5年4月からの繰下げみなし制度について

この法改正だけが来年4月スタートです。繰下げる予定で70歳まで手続きをしていない場合、もらい方は2通りあって70歳で繰下げでもらうかまたは65歳に遡って年金をもらう方法があります。これは繰下げを選択しないで今までもらっていなかった65歳から70歳までの5年分を遡ってもらうということです。繰下げを選んでいないので70歳以降は増額されない年金をそのままもらい続けることになる。65歳に遡って年金をもらう方法を選んだ時、70歳で手続きをすれば65歳に遡って年金をもらうことができますがもし71歳で65歳に遡って年金をもらう手続きをしたばあい71歳から66歳までの5年は遡ってもらうことができますが年金の時効は5年なので65歳から66歳は時効で1年分もらえなくなってしまう。

これが法改正によって、71歳で65歳に遡って年金をもらうを選択した時65歳から66歳までは時効でもらえなかったのが1年間の繰り下げ扱いになります。繰下げ取り扱いになることによって66歳から71歳の5年後の年金は1年繰り下げで増額された年金がもらえることになります。この繰り下げみなしができる人は昭和27年4月2日以降生まれの人この生年月日よりも前に生まれた人は繰り下げみなしかできませんので注意してください。